こんにちは。岡本大輔です。
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集英社
発売日 : 2013-06-26
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想像ラジオ/いとうせいこう
【本書紹介のねらい】
家族関係の葛藤……言いたくても言えない、伝わらない、もどかしさ、世間体、
※ 今回の書評にはネタバレを含みます。
【響いた抜粋と学び】
著者のランディ・マイヤーズさんは結婚し、ふたりの娘を育てるかたわら、バーテンダーをしたり、ノンフィクションを書いたりしていたが、DVの加害者や被害者のカウンセリングを担当するようになります。その経験が今回の書籍では十分に生かされています。
ランディ・マイヤーズさんも本書のストーリーのようにナイフを持った父を家の中に入れてしまいます。ランディ・マイヤーズさんの場合は殺人事件にまで発展しなかったのですが、その後、あのときもし母が殺されていたら……と考えるようになったようです。
511ページの大作……物語はルルとメリーの姉妹が幼少時から始まる。姉のルルは父の言葉を信じ、母に絶対開けてはいけない、と言われたドアを開けてしまう。
ナイフを持った父。母に詰め寄る。母を刺し、妹のメリーにも手をかける。母は絶命し、妹は一命を取り留めるも胸にそのとき刺された傷を残してしまう。
そして、姉妹は親類を含め周囲から「殺人者の娘」と冷たい視線を浴びる。
分厚い書籍だ……そう思いながらページをおもむろにめくっていく。父が子供の目の前で母を刺してしまう……子供たちの受けた心の傷はいかに?
心の傷をどう乗り越えていくのか? 自分たちの人生をいかに生きるのか?
そんな重たい内容のストーリーでしたが、予想以上に軽快にページが進んでいきます。
「覚えておおき、約束は神聖なものだ。神様が聞いているからね。約束を破ると、神様にわかるんだ。だけど大丈夫、おまえは約束を守る子だからね」。
「あなたが心配なのよ、ルル。あなたが持っているものを失うのはもったいないわよ」「私が持っているものって?」「可能性ですよ」。
このあたりは自己啓発によくある内容だな、と思いながらも登場人物の気持ちになりきって読んでいました。
特に二つ目の抜粋がいいですね。あなたはすでに持っている。”可能性”というすばらしい宝物を持っている。
「これから言うのが、私たちの経歴よ。両親は、車の事故で亡くなったの。そういうこと。北のほうで衝突したの。キャッツキル山地に行く途中にね。その後、ミミ・ルビーと一緒に暮らしていたけど、亡くなった。ダフィに入ったのは、他に親類がいなかったからよ」。
「打ち明けることは、私たちにとって最も危険な行為なの。私はふたり分の目配りをしているのよ。いつか私たちは子どもを産むでしょ。子どもには、恐ろしい殺人犯のおじいちゃんは不要なのよ」。
「そもそも最初から、私がパパの面倒をみるしかなかったのよ。姉さんが好きなことをしている間に、私がパパの家族になってあげていたのよ。おばあちゃんに、姉さんとは違って毎週のように刑務所に引きずられていったのよ。まったく! 姉さんは特別だった。すごく頭がよくて自信に満ちていて、だれの言いなりにもならなかった」。
祖父が刑務所にいることを……「どうして今まで話してくれなかったの?」「あなたたちを守りたかったからよ」「なにから守の?」「おじいちゃんから?」「違うわ。だって、刑務所にいるんだもの」「じゃあなんなの?」「知ってほしくなかったのよ、おじいちゃんが悪い人だなんて」。
自分の父親が殺人者だったとしたら……やっぱり、僕も自分の経歴を隠すのかな、と思ってしまいました。
その一方で4つ目の抜粋は考えさせられました。
守る? 何から? 殺人犯は刑務所の中にいる。身の危険はない。じゃあ何? ルルとメリーのように「殺人犯の娘」と蔑まれないように。
でも、それは心配することなのか、心配しすぎではないか? よくわからない。子供の純真さが生んだ質問だと思います。
パパには限界がある、決して成長しない男、私にできるのは、パパを嫌いすぎず、愛しすぎない術を学ぶことだけ、私は等身大の父を受け入れなければならない。
親……幼少のとき、誰もが自分の親を万能な人間だと思っていた、神だとあがめていたのかもしれない。あなた自身の成長とともに、同じ人間なんだ、と知る。親にもできないことがあることがわかってくる。
誰もが等身大の親を受け入れていく。老いていき、できなくなる親を受け入れていく、それが介護なんだと僕は感じました。
哲学に更けたいときに開いてみる一冊だと思います。
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